窓を開けると三島の港からか、柔らかい潮の香りを乗せた風が優しく部屋の中へ流れ込んで来ました。
5時の出発を目指して支度を整えましたが曇りの為か外はまだ暗く、暫く様子を見てと5時半に宿を出ました。
この日は三角寺から仙龍寺、さらに常福寺へ下り阿波池田付近までの行程。
天候は曇り時々雨の様な一日でした。
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先ずは三角寺を目指して伊予三島駅の方へ。早朝の為か人影も無く、静かな街を抜けて行きました。
前日から違和感のあった右足は相変わらずでしたが軽い筋肉痛か何かだろうと、動きの重さを少し感じつつも歩を進めて行きました。
7時半頃三角寺下の駐車場へ着くと、数台の車と車内に人影。納経所の開く時間を待っているのかなと石段を上がっていくと、既に納経所は開いていて記帳もされていました。
あれれ、と思いつつも、納経の開始時間については各御寺毎に対応が異なるのかなと思いながら。
参拝を終え境内から仙龍寺へと続く遍路道へ。
仙龍寺まで4km程の道でしたが、後半の下りで違和感のあった右足首を完全に痛めてしまいました。
遍路道をこんこんと下り、途中の石碑や不動堂を経て仙龍寺へ到着。山奥にひっそりと佇む秘境の御寺といった印象。
本堂や大師堂はどこかなと辺りを見回していると、参拝に訪れていた方が「この上ですよ」と御堂の中を指して教えて下さいました。
特徴的な本堂は内部に大師堂を兼ねた造りになっていて、靴を脱いで上階へ上がると納経所の横に御本尊弘法大師と不動明王をお祀りした須弥壇がありました。
納経所で押印墨書を待ちながら和尚様と暫しの雑談。毎度の如く、手拭いはありますか?とお尋ねすると、
「今は無いんですよ。昔は作っていたんですけどね。」との御返答。更に、
「昔は八十八霊場の手拭いを集めて、それで浴衣を作ったりしていたんですよ。
でも今はほとんどの方がそれを知らないし、霊場会で浴衣の見本でも作れば手拭いを買う人も増えるのかも知れませんけどね。」
とのお話し。
"手拭いで浴衣"というのは前日の延命寺でも耳にしていましたが、今回の区切り打ちで初めて知った四国遍路の歴史の一端でした。
参拝を終えて御堂の外へ出ると、サラサラと降り始めた弱い雨。
隅にあるベンチでバックパックにレインカバーを掛け携行食をかじり、足の状態を確認してみました。
右足首前側を伸ばすようにすると激痛が走るのですが、逆側、アキレス腱を伸ばす方向へ曲げる分には全く痛みが出ないという不思議な症状で、とりあえず鎮痛剤を飲んで様子を見ながら行こうと次の常福寺へ。
仙龍寺から常福寺までは、本堂の立つ場所から車などが上がってくる車道を行く道と、もと来た遍路道を再び三角寺方面へ戻り、途中の不動堂の先から下って行く道とがあるようでした。
当初は後者の道を行くつもりでしたが、この足の状態で再び不動堂のある場所まで登るのは厳しいと判断し、本堂から車道を下る道を選択しました。
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鎮痛剤を服用したものの、いつまで経っても効いてくる気配が無く、おかしいなと思いながらも、とりあえず今日は宿まで歩き切って明日の事は明日考えようと先へ。
常福寺へ12時半過ぎに到着。僧坊玄関前のベンチに座り、先達の団体さんが読経する姿をぼんやりと眺めながら昼食を兼ねて携行食のカロリーバーをボリボリ。
13時半。一路、阿波池田の宿へ向けて出発。
雨は一瞬強く打ったかと思えばピタリと止むの繰り返し。どんよりとした空が行先へと続いていました。
「民宿岡田」さんの付近だったか、雨宿りをしていたお遍路さんにお声を掛けられ、通りを挟んで二言三言。雲辺寺への道標が目に入り左手に迫る山を見上げましたが、中程から上はすっかり雲に覆われていました。
馬路小学校辺りに差し掛かると雨が上がり、雨後の湿り気を含んだ心地良い風が痛みを少し紛らわしてくれました。宿まであと少し。
足の状態を確認しながら途中のバス停など座れそうなところで小まめに休憩をとりつつ先へ。
歩きながら、そういえば今日も素泊まりだったっけかと思い出し、途中のヤマザキショップで食糧の買い出しをして。
雨天と足の痛みに気を取られていた事もあり、仙龍寺を出てからほとんど写真を撮る事が出来ず、常福寺を出てから次にレンズを向けたのは当日の宿「小西旅館」さんの部屋から見えた吉野川でした。
二年前。歩き始めて三日目に切幡寺から藤井寺への道中で渡った吉野川。
ここで再会する事となったその姿には感慨深いものがありました。
コメント
いつになるかはわかりませんが、まだ見ぬ景色を楽しみに次回は別格も一緒に回ろうと買った地図を見ながら計画しています。なかでも仙龍寺は皆さんのクチコミの内容や山の中を歩く遍路道も楽しみにしているお寺のひとつです。
@あの時の亀
コメント有難う御座います。
私も他のお遍路さんから仙龍寺はとても良いと聞いていたので、楽しみにしていました。
翌日訪れた箸蔵寺も素晴らしく、モミジが沢山植えられていたので、紅葉の季節はより一層の景観が見られそうです。