二年前。四国遍路の旅の安全祈願にと京都三弘法参りを巡り、最後に東寺で白衣や金剛仗などお遍路の道具類を購入しました。
帰りの新幹線の中で一緒に購入した黄色の遍路地図を開き、四国遍路とは一体どんなものなのだろうかとページを捲りながらその道を想像し、未知の世界に足を踏み入れて行く感覚に心踊らせていたのを覚えています。
これまで灌頂ヶ滝、月山神社、篠山神社など札所以外の地にも足を運び、各地で出会った景色や出来事に、愚鈍ながら今まで知る事のなかった感覚を少しずつ教えて頂いた様な気がしています。
各札所や番外霊場等々に順序をつけるものでは有りませんが、地図を手にした当初から"いつの日かここに"と、ひときわ注目していた場所がありました。
前回、年末年始の区切り打ち六回目。
時季的にその時は叶わなかったものの、星ヶ森から「必ず」と約束した石鎚山山頂に座す石鎚神社奥宮頂上社への登拝の為、この回の出発地点へ戻りました。
四国遍路を巡る為のトレーニングと称して、これまで幾つかの御寺様へ徒歩参詣を行って来ましたが、ここ最近はサボり気味になっていた事と、七回目の区切り打ちへ出る前に"仮想石鎚山"の意味も込めて、神奈川県の西方にある大山への「大山詣り」へ行ってみようかと思い立ちました。
大山(おおやま)とは丹沢山地の東端に位置する標高1,252mの山で、古くから山岳信仰の対象として知られています。
山内には真言宗大覚寺派の大山寺(おおやまでら)と阿夫利神社があり、山頂には阿夫利神社頂上本社が座しています。
大山寺寺伝によると、弘法大師空海を三世住持とし、高幡山金剛院、成田山新勝寺と共に関東三大不動と数えられる事もあるそうです。(と、知った様に書きましたが多分にネット記事等からの参照によるものです。)
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麓の「大山ケーブル」というバス停から出発し、大山寺を経て阿夫利神社へ。
大山寺へ至るまでの「女坂」と呼ばれる坂の途中には、弘法大師が一夜にして爪のみで彫ったとされる「爪切り地蔵」など「女坂七不思議」と呼ばれる場所が点在しています。
登り始めた時間が早かったのか、大山寺、阿夫利神社共にまだ開扉されておらず、とりあえず仮の参拝を済ませて頂上を目指しました。
入山してから一時間半ほど。幾度目かの急坂を登り切ったところで遠く山並みの向こう、春霞の中に浮かぶ霊峰富士の姿がありました。
傍には『江戸時代にはここに茶屋が置かれ浮世絵にも描かれた』との立札があり、今も昔も変わる事の無い富士山を愛でる人々の心を想いました。
そこから30分程で山頂へ到着。所々に急坂も有りましたが、それほど苦しい場面も無く登頂する事が出来たので、この大山詣りは石鎚山登拝への自信となりました。
多度津からの予讃線を伊予西条で下車し、翌日の登山に備えて駅前のコンビニで食料や水を調達して駅前のバス停へ。
宿を取った石鎚神社口之宮本社まで歩けば4km程ですが、この日は徹底して足を休めると決め、バスでの移動を選択しました。
最寄りのバス停で下車し、先ずは前神寺へ足を運んで参拝後、巡礼再開初日に叶わなかった重ね印を頂いてから石鎚神社へ。
朱塗りの二の鳥居、御門を潜って石段を幾度か上がり本殿へ御挨拶の後、弘法大師像と役行者像へ礼拝。再び石段を下りて石鎚神社会館へ入りました。
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一階は売店や休憩所の様になっていて、2階から上が宿泊施設のようでした。
宿泊の受付まで少し時間があったので、売店でカップラーメンと餅菓子を購入して遅めの昼食。その後お部屋へ御案内頂きお風呂へ。
受付の方に浴場の説明などを頂きながら、
「山頂までかなり距離があるので、早めの出発をお勧めします。先ほど頂上山荘のスタッフが来ていて、明日お待ちしてますと言っていました。」
と、予約時に次ぎ再度の御心配を頂いてしまいました。有り難い事でした。
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石鎚山奥宮頂上社への登拝に向けて、石鎚神社頂上山荘と石鎚神社会館へ宿泊の予約を入れていましたが、区切り打ち出発の一週間程前に両方の職員の方から電話を頂いていました。
内容は宿泊日と、何処から頂上を目指すかの再確認でした。予約時にお伝えした通り口之宮本社から歩いて山頂を目指しますとお伝えすると、「かなり距離がありますが大丈夫ですか?」とのお言葉。
口之宮本社から今宮の登山口までおよそ16km。そこから石鎚山山頂までおよそ9kmの計約25km。
ここまで四国遍路で一日30〜40km歩いた事もあるので大丈夫だと思うのですが、とお伝えすると、再び確認の後電話を終えました。
巡礼二日目に足を痛め、その後も回復の兆しが見えない中で、今回ばかりはしょうがないかと石鎚山への登山は半ば諦めていました。
しかし日を重ねても、星ヶ森で観じた石鎚山山頂に立っているイメージは消える事はありませんでした。
何とか巡礼を続け登山当日へ漕ぎ着けたものの足の痛みがどう変化するのか分からず、ともかく今宮の登山口まで歩き、その時点で山道へ入るか、或いは更に4kmほど歩いてロープウェイを使うか判断する事にしました。
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翌朝。
いつもと変わらない一連の支度を済ませて午前4時に会館の勝手口から外へ。足の痛みは相変わらずでしたが、ピーク時から比べるとやや落ち着いていました。
真っ暗な境内をヘッドライトを頼りに進み、御門前で必ず戻りますと念じて一礼。
二の鳥居を出て左に進むと、道沿いに植る蜜柑の花の香りが漂い、東の空には右の欠けた月が浮かんでいました。
コメント
私も大山は地元県民ですが存在こそ知っているものの心と体力の準備が整わず未だ登ったことはありません。もう少し気楽に行けるところはないかと鎌倉天園ハイキングコースを仮想へんろ転がしとして練習したことがあります。2〜3時間程度の焼山寺道をコンパクトにしたような感じでした。
@あの時の亀
コメント有難う御座います。
私も大山詣りの存在は以前から知っていたのですが、具体的な事は何も知らずにいたので今回は良い経験になりました。
そして私も同じく、お遍路の練習として天園ハイキングコースを歩いた事があります(笑)
写真を見返してみたら、ちょうど2年前の今頃でした。当時の事を懐かしく思い出しました。