
朝方のじっとりと重い空気はどこへやら。
正午から先の一番暑い時間帯。焼かれる様な陽射しに吹き出す汗も、乾いた風が拭ってくれました。
遠くに見える山並みと、その遥か上まで湧き上がる積乱雲。
夏のお遍路は厳しい場面もありますが、夏ならではの情景が足を前へと運んでくれます。
香西寺から一宮寺までの道中は、これまでに感じたことの無い、ゆったりとした心持ちで歩いていました。
学校の前を通り過ぎ、一宮寺まであと僅かのところ。道沿いの遍路小屋に誘われて足を止めると、軽い疲労と眠気を感じて休憩をとる事に。
荷物を下ろして隅に置いてあった団扇をお借りして顔や手を扇ぎながら横になり、庇の向こうに広がる空を見上げました。
閑かな住宅地 遠くで鳴く蝉の声 夏の空
なんて贅沢な時間なんだろう。
そう思いながら、今ここにある事を有り難く思いました。
遍路小屋にはいわゆる「思い出ノート」が置かれている事がありますが、その中には様々な体験談や人生観、何故お遍路を歩いているのか等々、一人一人の密な声が記されていたりします。
たまには何か残してみようかとパラパラと捲っていると、この遍路小屋のノートにはお遍路さん以外にも地元の方々や学校生徒さんの声もあり、こちらもまた興味深いものでした。
30分程うつらうつらとした後、少し歩いて一宮寺へ。こちらも何故だか不思議と心落ち着く御寺様でした。
時刻は16時少し前。
西へ傾いた夏の陽が、境内のあちこちに柔らかな陰影を作っていました。
納経を済ませてそろそろと、山門の方へ向かっていると、鐘楼の側に腰掛けている歩きのお遍路さんの姿が。
両膝にテーピングを巻き、少し苦しそうな表情。
恐らく野宿の通しで歩かれているであろう出立ち。
前を通る際に目を合わせてお互いに会釈。
言葉はありませんがお互いの労をねぎらう、そんな空気でした。
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近くのスーパーへ寄った後、当日の宿「そらうみ」さんへ。宿主の野瀬さんを知ったのは、四国遍路での参拝方法を調べていた時でした。
歩き始めてから一年ほど後、各地の宿を探す中で「そらうみ」さんの存在と野瀬さんが宿主をされている事を知り、ゆくゆくこの近くを歩く時、タイミングが合えば是非にと思っていました。
アットホームな宿のスタイルで、夕食は宿泊者の皆さんと御一緒に。
自己紹介に始まり、それぞれの旅の話しやこれまでの人生についてなどなど。
終盤には皆さんで歌を歌うなど、コミュニケーションが好きな方にはお勧めの御宿です。
当日は私よりも年長の方が多く、一つ一つのお話に気付きや学びがあり、正に「人に歴史あり」と感じた一夜でした。
コメント
宿での人との出会いやその時の話は、自分を見つめ直すいい時間でした。年配の方の話、若い方の話、どちらもぜんぜん違う生き方をしていてとても刺激になりました。
@あの時の亀
コメント有難う御座います。
過去の辛い経験などもサラっと笑いながらお話しくださる姿は、柔和な中にもそれを乗り越えて来た力強さを感じました。其々の生き生きとした表情が忘れられません。
今は何でもネットで検索すれば答えを見つけるのは容易ですが、対面でお聞きする生きた言葉には、文字には無い力があると感じました。