
この日、もう1人の同宿の方は上海から来た女性のお遍路さん。高野山を訪れて四国遍路を知り、これから区切り打ちで巡られるとの事。
会話の中で、以前に訪れたという中国 陝西省の西安にある、青龍寺の御朱印の画像を見せてくれました。
かつて弘法大師が入唐し、恵果阿闍梨から密教を伝授された御寺。
ここを四国八十八ヶ所"零番"札所とする話もあると、後々調べて知りました。
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当日は十二月三十一日、師走大晦日。
「よかったら午前0時過ぎに」と宿主さんに誘われて、宿の方全員で大麻比古神社へ初詣。
阿波国一宮とあって、かなりの人出でした。
一度宿に戻り、霊山寺に行って来ますと告げて、一人てくてくと山門の方へ。
篝火と提灯でライトアップされた山門は昼間の姿とはまた違った趣き。
大麻比古神社ほどの人出は無く、一組二組と入れ代わりで参拝の方が訪れる静かな境内。
鐘楼で鐘を撞き、本堂大師堂と参拝。
元日ならではの有難い体験をさせて頂きました。
初詣から戻って少し仮眠をとり、支度を済ませて7時半に出発。
令和七年一月朔日。
宿の玄関を出ると、通りの先には霊山寺の山門。
合掌して暫く。
手眼を開いて歩き出しました。
南に歩きながら時折霊山寺のある方を振り返り、そうは言ってもやっぱり名残惜しいんだなと、一人ごちて。
フェリー乗り場のある徳島港まで、霊山寺からおよそ18km。とりあえず歩いてみようかと太陽の上がってきた方角へ。
港までの経路は大体調べていたのですが、どういう訳か見当外れの場所へ進んでしまい、このままだと乗船を予定していた時間に間に合いそうにないと、とりあえず徳島駅へ出て、そこからはタクシーで徳島港へ。
乗船後、甲板へ出て邪魔にならないよう隅へ。
ゆっくりと遠ざかって行く四国へ向けて般若心経を一唱。
黒く濃い島影が徐々に白く霞み、やがて空の色と一つに溶けて行きました。
徳島港から2時間程で和歌山港へ到着。
下船後、初めて訪れる土地の街並みや風景を眺めながら、てくてくと和歌山駅へ向けて。
港から駅まで約4km。途中、和歌山城を左手に歩を進めて駅前のホテルに到着。
翌日。午前6時に出発。
四国とはまた違う、芯から凍るような寒さ。
先ずは前日、港から歩いて来た138号線へ出てから24号線へ。この道で高野山の麓、九度山まで行けるはずでしたが、歩を進めていると和歌山I.C南口という交差点の先からそのまま高速道路に接続してしまうと分かり、高速入口の手前で右に折れて143号線へ。
そのまま直進して行くと、頭上の青看板に「橋本」の文字。これで大丈夫と一安心。
その後9号線へと接続するこの区間は、数km間隔でコンビニもあり、トイレや水分調達の心配はありませんでした。
出発から一貫して市街地を歩くアップダウンの無い道で、10号、14号線を経て24号線へ。
両手には紀伊国、和歌山の山並み。
陽が高くなるにつれて暖かさを感じる様になり、暫くすると暑いくらいに。
定期的に休憩を取り、翌日の高野山へ向けて今日はあまり足を使わない様にと、ゆったりとした歩調で。
電柱やガードレールに道標のステッカーを探してしまいますが、ここはもう四国じゃないんだと気付き、四国遍路で習慣付いた癖を可笑しく思いました。
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16時少し前に九度山橋を渡り「中川旅館」さんへ到着。
南東に聳える一段高い山々に、いよいよ明日かと、身の引き締まる思いでした。
コメント
私は結願後に高野山には向かいませんでしたが、時間作れれば行きたいです。帰っても電柱の矢印は探してしまいますね。
@あの時の亀
コメント有難う御座います。
人生で初めて訪れた和歌山県と高野山でしたが、ここまで大事無く来られたのは、本当に有難い事です。
上手く言い表せませんが、高野山は無二の場所だと感じました。
機会がありましたら是非訪れてみて下さい。