
天気
黒潮町の宿を出た朝、昨日の雨はすっかりやんで、ところどころ道は濡れているが空はすっきりと晴れている。
強い日差しというほどでもなく、歩くにはちょうどいい天気だ。雨がないというだけで、体も気持ちも驚くほど軽い。
今日も参拝するお寺はない。
国道をひたすら歩く一日だ。正直、昨日とやることはほとんど変わらないはずなのに、足の運びが全然違う。靴の中がちょっとだけ靴が湿っていて気持ち悪いことを除けば、こんなにも歩きやすいのかと実感する。
国道沿いの風景
しばらく歩くと、土佐西南大規模公園のあたりに差しかかる。
広く開けた空間で、空も遠くまで見渡せて、視界が一気に広がった。ところが、橋を渡ると景色は一転する。道は松林に囲まれ、左右から木々が迫ってくるような感覚になる。日差しも遮られ、音まで吸い込まれていく感じがして、急に閉鎖的になった。
四万十大橋を渡る。
名前は前から聞いたことがある有名な橋だけれど、実際に歩いて渡ると、その長さと川の広さがよく分かる。車なら一瞬で通り過ぎてしまう場所も、歩いていると景色がゆっくり流れて、「今、川を越えている」という実感がちゃんと残る。ただ、渡り切ってしまうと意外とあっけない。「もう終わりか」という拍子抜けと同時に、こういう感覚も歩きならではだなと思った。
新伊豆田トンネルに入ると、空気が一気に変わった。
湿った冷たい空気がまとわりつき、足音だけがやけに大きく反響する。車の通りはほとんどないのに、とにかく長い。歩いても歩いても景色は変わらず、感覚だけが削られていく。ようやく出口の光が見えたときは少し安心したが、それでもまだ遠い。「見えてからが長い」というやつだ。トンネルを抜けるまで、ずっと同じリズムで歩き続けるしかなかった。
途中、真念庵の案内を見かけて、思わず足が止まりそうになった。札所以外で、いかにも遍路らしい場所に寄り道することは、これまでほとんどしてこなかったけれど、ここは少し気になった。ただ、結局はいつも通り先を進むことを選んだ。ルートから大きく外れていなければ行っていたかもしれないが、今日はリズムよく歩きたかった。
下ノ加江のローソンに着いたときは、正直かなりホッとした。
四万十大橋を渡る前のコンビニからずっとなく、昼ご飯を食べそびれていたので、ようやく補給できる場所にたどり着いた感じがした。店の前には車も多く停まっていて、それを見て「ここまで、そしてこの先、相当何もなかったんだな」と思った。歩いていると距離の感覚が曖昧になるけれど、こういう場所に来ると、いま歩いてきた区間の長さを改めて実感する。
夕方前、大岐に到着。
派手な達成感はないけれど、ちゃんと一日分、前に進んだという実感だけは残った。
今日の学び
今日は晴天、それだけで十分な一日だった。本当に歩きやすかった。
昨日の雨の中を思い出すと、足の運びも、気持ちの余裕も、まるで別物だった。特別な出来事がなくても、条件が少し変わるだけで、旅の印象は大きく変わる。
天気に感謝するのは少し照れくさいけれど、雨が降らなかったことに「ありがとう」と思ってしまった。
昨日の雨があったからこそ、そう感じられた一日だった。


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