
電車で戻り、次の仏木寺へ
宇和島駅前のビジネスホテルを出て、朝は電車に乗る。
昨日歩いた道を戻り、務田駅で降りた。歩き遍路をしているのに電車に乗るのは少し不思議な感覚だが、今はこういう移動も自然に受け入れている。
すでに龍光寺は参拝しているので、今日は仏木寺へ向かう。
道は穏やかで、田園の中を進むような落ち着いた雰囲気だった。仏木寺に到着し、静かに手を合わせる。ここまでの流れの中で、参拝もだいぶ落ち着いてできるようになってきた。
歯長峠を越える
仏木寺を出ると、すぐに歯長峠の入口に差し掛かる。
車道のルートもあるが、かなり遠回りになるのは嫌だった。それに、この峠道が荒れているという話を以前から知っていて、どこか気になっていた。
今日はそのまま峠道へ入ることにした。
最初は普通の山道だったが、すぐに様子が変わる。
落ち葉が積もり、道は判別しにくくなる。ところどころ崩れていて、足場も不安定だ。倒木が道をふさいでいる箇所もあり、またいだり、避けたりしながら進む。
踏み跡はあるが、はっきりしない。
「本当にこの道で合っているのか」と何度も思う。人の気配はなく、音もない。足音と息遣いだけがやけに大きく感じられる。
勾配もきつくなり、汗が出る。
それでも、不思議と嫌ではなかった。整備された道ではない分、「自分で進んでいる」という感覚が強い。ようやく峠を越えたときには、小さな達成感があった。
明石寺から、大洲へ
峠を下り、四十三番札所の明石寺に到着したのは、まだ昼過ぎだった。
時間的にも体力的にも、まだまだ進める。
ただ、ここから先が問題だった。
この先は宿が少ない。というより、大洲まで行かないと泊まる場所がほとんどない。今日全部の距離にして約40キロ。決して不可能ではないが、簡単でもない。
選択肢は「無理して行く」か「無理しないで行かない」か。
・・・行く。
国道56号をひたすら歩く。
車の往来は多いが、歩道が整備されていて歩きやすい。単調な道が続くが、とにかく距離を消化していく。途中からは時間を意識するようになり、景色よりも時計を見る回数が増えていった。
日が傾き、やがて暗くなる。
それでも足は止めない。久しぶりの長距離だが、体はなんとか動いてくれた。
大洲の町に入ったときには、すでに夜になっていた。
民宿は到着時間が遅くなると迷惑になるのでビジネスホテルにした。
そのホテルに着いたのは19時過ぎ。さすがに疲れたが、「今日はよく歩いた」という実感だけはしっかり残っていた。
今日の学び
宿が少ない区間はこれまでもあったが、電車やタクシーで大きな町に移動できた。
しかし今回は「行く」か「行かないか」、それだけだった。
40キロという距離自体は、この遍路を始めた初期の頃は毎日そうだった。
でも今日は、時間を気にしながら、とにかく進むことだけを考えていた。そのせいか、振り返っても道中の記憶があまり残っていない。
今日も一日中歩いたはずなのに、そんなに歩いていないような感覚だった。


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