15日目:短い距離でも旅はちゃんと楽しい(土佐市街▶浦ノ内)

15日目:短い距離でも旅はちゃんと楽しい(土佐市街▶浦ノ内)

青龍寺までの静かな朝歩き

朝、清瀧寺の麓の町にある宿を出る。今日はわずか20kmほど。体も軽く、心にも余裕があった。今日の目的地の浦ノ内の宿まで距離が短いのは知っていたので、県道のトンネルコースではなく、あえて塚地峠を越える遍路道を選ぶことにした。
宿を後にし、住宅街を抜け、やがて山方向へ向かうと空気がひんやりしてくる。土の匂いが強く、足音が吸い込まれていくような静けさ。道は少し荒れているところもあったが、昨日までの参拝ラッシュとは違い、誰にも会わない時間が心地よかった。
峠を越えて下りへ差しかかると、遠くに海が見えた。その海が徐々に近づく匂いがすると思えば、のちに宇佐大橋に差しかかった。
 
 

宇佐大橋の恐怖と、浦ノ内の穏やかな午後

その宇佐大橋、風こそ吹いていなかったが、手すりが思った以上に低く、海面までの高さがやたらと強調される。歩道も狭く、車が通るたびに体が強張った。橋の途中で海を覗くと、青く穏やかな水面が広がっているのに、なぜか脚がすくむ。

青龍寺は山の静けさに包まれていて、境内を抜ける風がやわらかかった。長い階段を息を整えながら登り切り、手を合わせた瞬間、胸の奥がすっと軽くなるような感覚があった。

参拝後は同じ道を戻るコースを選んだ。さっき歩いたばかりの大橋を渡り切ると、そこからはのんびりとした漁村の風景が続く。海と山に抱かれたような浦ノ内の入り江は静かで、波もほとんど立っていない。歩きながら、「明日は巡航船に乗るんだよな」と思うと自然とテンションが上がった。今日、距離を短くしたのも、その船のことを考えてのことだ。
 
 

宿に早く着いた夕方のこと

今日の宿は須崎の手前、浦ノ内の途中にある小さな宿。早く着きすぎるかと思ったが、玄関を開けると「ゆっくりしていきよ」と気さくに迎えてくれた。
宿の周りはとにかく静かで、昨日までの市街地の喧騒、高知駅前の雑踏、あのスピードから一気に遠ざかった気がした。
たった20数キロしか歩いていないのに、塚地峠の山中の雰囲気や青龍寺の静けさ、宇佐大橋の恐怖、浦ノ内の穏やかさ、ひとつひとつが濃かった。距離じゃなくて、どんな一日だったかで旅の満足度は決まるんだな、とじわじわ思えてきた。
 
 

今日の学び

昨日、「その場所にいる時間をもっと大事にしよう」と思い、今日はその気持ちをちゃんと実行してみた。
峠道でも青龍寺でも、急がずに立ち止まり、風や音、景色をじっくり感じてみた。不思議なことに、距離は短いはずなのに、一日がとても豊かだった。足の疲れよりも、心の満たされ方のほうが大きかった。
今までは「歩くこと」が旅の中心だと思っていたけれど、立ち止まることがこんなにも旅を深くしてくれるとは思わなかった。

 

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