
朝早く、横峰寺へ向かう
今日は歩き遍路でも難所として知られる横峰寺を目指す日だ。
なにがなんでも横峰寺を降り切らないと寝るところがない。久々の40kmチャレンジになりそうだ。
少しでも早いうちに歩きたくて、ホテルの朝食時間を待たずに出発した。
国道から始まり、住宅街、ふもとの集落、田んぼへと、周囲は少しずつ山の景色へ変わっていく。
聞こえるのは鳥の声と川のせせらぎだけになった。
登り始めは舗装路だ。
道幅は車がすれ違えるほどあるが、不思議なくらい車は通らない。ただ黙々と坂を登るだけの時間が続く。
最初は景色を楽しむ余裕もあったが、勾配は少しずつきつくなっていく。カーブを曲がるたびに「この先で終わりだろう」と思う。しかし、その先にもまた同じような坂が続いていた。
ようやく湯浪休憩所へ到着した。
ベンチに腰を下ろし、水を飲む。立派なトイレがありがたかった。
ここまででも十分疲れたが、本当に大変なのはここからだと聞いている。
少し休んで立ち上がる。
「さて、行くか。」そう思って歩き出した。
久々のキツい山道
休憩所を過ぎると、空気が一変した。
舗装路は終わり、本格的な遍路道が始まる。
最初に待っていたのは階段だった。
一段一段の高さが小刻みで自分に合わない。登っても登っても階段は終わらず、太ももが少しずつ重くなっていく。
山の中は静かだった。
足元では、小川というほどでもない細い水がさらさらと流れている。
場所によっては、山から染み出した水が道を横切っていた。
そんな音だけが聞こえる。
あとは、自分の荒い息づかいだけだった。
歩いても歩いても着かない。
何度も「そろそろだろう」と思うのに、お寺はまったく姿を見せない。
途中からは距離を考えるのをやめた。
ただ次の木まで、またその次の木までと、自分に言い聞かせながら歩く。
「こんなにきつかったのは、徳島の太龍寺以来だな。」
自然とそんな言葉が頭に浮かんだ。
長い長い登りを終え、ようやく横峰寺へ到着した。
まず驚いたのは、お寺そのものだった。
こんな山の奥深くに、これほど立派で美しく整えられたお寺が建っている。
昔の人はいったいどうやって資材を運び、これだけのものを造ったのだろう。
そんなことばかり考えてしまう。
参拝を終えたあと、一番ありがたかったのは境内の自動販売機だった。
冷たいジュースを一気に飲み干す。
そして下り用にもう三本買ってリュックへ入れた。
下りも長い
帰りも決して楽ではない。
下りだから簡単だろうとは思っていなかったが、それ以上にきつかった。
細い山道は赤土が混じり、場所によっては滑りやすい。落ち葉の下が湿っていて、足を置くたびに気を遣う。
急な坂では膝に体重がかかり続け、登りとは違う疲れがじわじわとたまっていく。
ゆっくり歩きたいのに急坂のせいで勝手に足が出て走ってしまう。
それでも時間とともに着実に進んでいるはずのに、なかなか麓へ着かない。
「まだあるのか。」
その言葉を何度心の中でつぶやいたか分からない。
ようやく舗装路が見えたときは、本当にほっとした。
アスファルトの道が、こんなにも歩きやすく感じたのは初めてかもしれない。
その後もしばらく歩き続け、小松の町へ。
宿に着いたときには、今日は横峰寺だけで一日が終わったような気分だった。
今日の学び
今日は「登ること」よりも、「あきらめずに歩き続けること」の一日だった。
横峰寺への道には近道も裏技もない。苦しくても、この山を一歩ずつ進むしかない。
歩いている最中は永遠に続くように思えた坂も、振り返ればちゃんと終わっていた。
遍路ころがし的な難所はこの先なさそうで、少し結願を意識し始めた。


コメント
この酷暑の中。凄いペースですね。
自分は先日。三坂峠を降りてきたとたんに熱中症になり46番浄瑠璃寺さんで1時間倒れました。
道中ご安全にお過ごし下さい。
@月あかり🌕
コメントありがとうございます
昨年結願までを終えて帰ってきた後の思い出し投稿なんです
これからもよろしくお願いします