
また山へ向かう
土居のホテルを朝早く出発する。
昨日は国道11号を延々と歩き、最後には景色にも歩くことにも少し飽きてしまった。
今日もしばらくは国道を歩く。ただ、昨日とは気分が違う。今日は65番三角寺が待っている。
三角ってこの▲?前々からその名前に興味を持っていた。
四国中央市の町を進んでいくと、製紙工場の大きな建物や煙突が見える。この辺りが紙の町だということは、歩いていてもなんとなく分かる。交通量も多く、しばらくは昨日から続いているような国道歩きだった。
やがて国道を離れると、少しずつ住宅が減り、道は山のほうへ向かい始める。
さっきまで平らだった道に坂が混じるようになる。
昨日は「同じ景色ばかりで飽きる」と思っていたのに、坂道が始まると今度は平らな国道が少し恋しくなる。
我ながら勝手なものだ。
山の中の三角寺
三角寺へ近づくにつれて坂はきつくなっていく。
民家の間を抜け、さらに山の中へ。少し前まで町の中を歩いていたのに、いつの間にか周囲は木々ばかりになっていた。
最後までしっかり登らされる。
横峰寺ほどではないが、十分きつい坂だった。
ようやく三角寺に到着。
山門へ続く石段を見上げて、「まだ登るのか」と少し笑ってしまった。
石段を上がって境内へ入る。
三角寺は山の中にあり、木々に囲まれた静かなお寺だった。町からここまで登ってきただけに、境内の静けさが余計に印象に残る。
境内には名前の由来にもなった三角形の池がある。弘法大師が三角形の護摩壇を築いたことに由来するという。
なるほどね。
ここは伊予、愛媛県最後の札所でもある。
一番札所から歩き始めたころには、愛媛県の最後のお寺なんて想像もできなかった。
徳島、高知、そして愛媛。
ずいぶん歩いてきた。
ただ、今日はここで終わりではない。
次の66番雲辺寺へ向かわなければならない。
雲辺寺の手前まで
距離的な問題で雲辺寺は明日にすることにしている。
問題は、どこに泊まるかだった。
雲辺寺の麓には宿がほとんどない。調べて見つけた一軒に問い合わせてみたものの、残念ながら満室だった。
地図を見ても、ちょうどいい場所に宿がない。
さらに調べていると、少し先の町に宿を一軒見つけた。
ただ、そこまで今日歩くとなるとかなり遠い。
どうしようかと思いながら宿の案内を見ていると、ありがたいことに、雲辺寺の麓まで迎えに来てもらえることが分かった。
これは本当に助かった。
三角寺を出て、再び山を下る。
そこから雲辺寺方面へ向かって歩いていく。
明日はまた山登りだ。
しかも雲辺寺は八十八ヶ所の中で最も標高が高い札所。
目の前にある山を見ながら、「明日はあそこまで登るのか」と少し気が重くなる。
それでも今日は、約束した場所まで歩けば宿の人が迎えに来てくれる。
時間に間に合うように歩き、待ち合わせ場所へ到着した。
しばらくすると迎えの車がやってきた。
車に乗り込み、宿へ向かう。
知らない風景が窓の外を流れていく。
歩けば長い距離なのに、車だとあっという間だ。
宿に着いてザックを下ろす。
今日も無事に終わった。
そして明日の朝は、また同じ場所まで送ってもらい、そこから歩きを再開する。
今日の学び
ここまでの旅で、電車にも乗ったし、タクシーを使ったこともある。今日のように宿の方に送迎してもらうこともある。
歩き遍路だからといって、移動手段を一切使わないと決めているわけではない。
ただ、自分の中でいつの間にか一つだけルールができていた。
「乗り物を使って、まだ歩いていない場所まで先に進まない」
宿へ行くために車に乗っても、翌朝は同じ場所まで戻って、そこから続きを歩く。電車を使ったときも同じだった。
誰かに決められたルールではないけれど、自分にとってはこれが一番気持ちいい。
今日も車で宿へ向かい、明日はまた同じ場所へ戻ってくる。
これなら、自分の中ではちゃんと道がつながっている。


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