火の用心

◎ 火災のニュースが教えてくれたこと

皆さんもご存知の通り、先日、愛媛県今治市で大規模な山火事が発生しました。乾燥した気候と強風が重なり、山林だけでなく、周辺の住宅地や道路にまで火の手が及ぶ大きな被害となりました。
このような火災は、一度発生すると消火活動にも時間と労力がかかりますし、何より近隣の方々の生活が一変してしまいます。四国の豊かな自然の中でお遍路をしている私たちにとっても、決して無関係な話ではありません。

「自分には関係ない」と思っていても、火のトラブルは、ほんの少しの油断から起こります。特に、山や森の中を歩くお遍路においては、“火を使う場面”が意外と多いということを、改めて意識しておく必要があると感じました。

◎ お遍路中、火を使う機会はいくつもある

■ 喫煙マナー、基本のキ
お遍路中に火を扱う機会として、まず思い浮かぶのがタバコです。近年は喫煙所の設置が進んでいますが、全体としては決して多くありません。そのため「ちょっと外で一服だけ…」といった油断が、火災の引き金になる可能性もあります。

  • 必ず指定された場所で喫煙しましょう。
  • 吸い殻は確実に消火し、灰皿に捨てるか持ち帰ること。
  • 携帯灰皿を持参しておくと安心です。

■ 線香・ろうそくの注意点
そして、もうひとつ多いのが、お寺での線香やろうそくの使用です。これも「巡礼の一環だから」と油断しやすい場面ですが、やはり火を扱っていることに変わりはありません。

  • 火を灯す前に風の強さや方向、周囲の環境を確認しましょう。
  • 風が強い日は使用を控えるという選択肢も大切です。
  • 点火後は、線香やろうそくがしっかり立っていて倒れないか確認しましょう。

■ ライター類の管理
また、ライターやマッチといった火をつける道具も、扱いには十分注意が必要です。リュックのサイドポケットやズボンの浅いポケットに入れておくと、歩いている途中に落としてしまうことも。

  • 使用後はポーチやチャック付きポケットなど安全な場所に収納。
  • 万が一落としてもすぐ気づけるよう、定位置管理を心がけましょう。

◎ 野宿遍路の皆さんへお願い

遍路スタイルのひとつとして、テントや屋外で宿泊する「野宿遍路」の方もいらっしゃいます。私もその一人。
ただでさえ地域の理解を得にくいスタイルのため、火に関するマナーには特に気を配っていただきたいと思います。最近はSNSなどで「野宿禁止」や「マナー違反」の情報が拡散されやすくなっており、たとえ関係がなくても、地元の方から疑いの目を向けられることがあります。

■ だからこそ、あえて気をつけてほしい
「火気厳禁」と書いていない=使っていい、ではない。
“見られている”という意識を持ち、信頼を積み上げる行動を。
「自分は関係ない」ではなく、「全員の印象を背負っている」と捉えてほしい。これは他人のためではなく、野宿スタイルを続けられる環境を守るためでもあります。誤解を受けない行動を自ら選ぶこと。それが、地域との共生にもつながると私は思います。

◎ 自然とともにある旅だからこそ、守りたいもの

お遍路は、自然の中を歩く旅。木々のにおい、風の音、野花の彩り、そして地域の暮らし。これらすべてが、お遍路の魅力をつくっています。でもその自然は、とても繊細です。一つの火種が、それらすべてを奪ってしまうこともある。歴史もそう。だからこそ、自分の行動がどう影響するかを想像してみることが大切だと思います。
小さな火でも、油断すれば大きな被害を生みます。反対に、一人ひとりのちょっとした注意が、大きな安心につながります。

◎ 最後に

火の取り扱いに関する細かいルールが用意されているわけではありません。でも、それは「守らなくていい」という意味ではなく、私たちの常識や良識が試されているということ。

「火を使うな」ではなく、「火を安全に使おう」。
その意識を持っていれば、これからも四国の美しい遍路道を、多くの人が気持ちよく歩けるはずです。

これから歩く方も、今まさに歩いている方も、どうか少しだけ、火のことを思い出していただけたら嬉しいです。

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