佐喜浜を出発してひた室戸岬へ。
恐らく海沿いの道なら街灯も有るだろうと、予想していた通り立ってはいましたが間隔が広く、灯りの届かない場所はかなり暗く視界が悪い状況でした。
持参したヘッドライトを着け、轢かれないように一応手にもLEDライトを持って後続車両への合図としました。
前日頃から本州へ台風が接近していた影響か、岸壁へ打ちつける荒波の轟音が響き何と無く心細く感じましたが、薄雲から覗く月明かりに助けられていました。
当夜は満月でした。
1時間に1回の休憩を挟みつつ、般若心経や光明真言を唱えながら黙々。
陽が出ていない分気温は下がっていましたが、相変わらずの湿度で歩いていればじっとりと汗ばみます。
暫くして行手に黒々とした巨大な奇岩が見え、近づいて行くとそれが夫婦岩だと判りました。
休憩がてら暫し足を止めガードレールにもたれて、月光と街灯に照らされた不思議な姿を眺めていました。
車通りは殆ど無いかと思いきや意外にも数分おきに通り過ぎて行く車が有りました。
途中、室戸ジオパークセンターの小屋で30分程横になり再び歩き出します。
更に先へと歩を進めると行手山側に白い大きな何かが見え始めました。
何か、とライトを向けると巨大な弘法大師像が浮かび上がり、驚きのあまり「うお!」と声を出してしまいました。
徐々に岩場のような景観に変わり始め、暫くして御厨人窟へ。時刻を確認すると日の出迄まだ時間がありました。
一旦少し先まで歩き、夜空を転回する灯台の灯を確認して再び御厨人窟前へ。
洞の手前にある案内所の前にマットを敷いて横になりました。
薄く掛かる雲を透かして輝く、視界を埋め尽くす無数の星。
「あれは何て星座だっけか」と、一人呟きながらぼんやりと見上げていました。
この空を写真に収めようかと少し考え、きっと上手く写らないだろうと撮らずにおきました。
仮に上手く写せたとしても、それはそれで何か違うような気がしました。
暫くして水平線が明るみを帯び始め、朱い陽が夜闇を追っていきました。
空と海。それ以外、何も無い。
約1200年前、四国の山野を巡りこの室戸の僻地で目にした光景に、弘法大師空海は何かを感じられたのでしょう。
コメント
いままで他では見たことのない陰影のある夫婦岩や室戸岬の写真にいま心を打たれました。貴重な体験をされましたね。
夜もきっとそうなんでしょうが、昼間でも誰もいない、音もしないという自分だけの空間になったときが好きです。
@あの時の亀
コメント有難う御座います。
これまでの道中で一番印象に残っている区間であり景色です。
天候にも恵まれ、運良く日の出を見る事が出来たのは有難い事でした。
@naru
コメント有難う御座います。
そうですね。早朝の御寺や山中など人気の無い空間や瞬間は私も好きですね。
自分も室戸への道は夏に行ったので印象深いです。夜に歩くのも暑さ対策には良いかもしれませんね。
それにしても大変良い写真が撮れましたね!
@ひろ(歩き)
コメント有難う御座います。
夏に室戸を歩かれたのですね!
仰るように夏のお遍路では夜間や早朝に歩くのも一つの手かも知れませんね。
決して楽ではありませんでしたが、素晴らしい景色に力を頂き歩く事が出来ました。