#37 再会

#37 再会

ベルリーフ泊の翌日。この日は宿毛へ出て三十九番延光寺を打ち、宿毛市街へ戻って一泊という行程でした。
先ずは当日の目的地の一つである「不動の滝」へ。宿を出て大月町周防形の町を抜け海沿いから山の方へと進んで行きました。
途中、周防形小学校前を通り過ぎましたが、ここは廃校となっている様で閉校して間もないのか二階建ての校舎に古さは無く、中央に据えられた時計はその役目を終え閑かになった校庭をどことなく寂しげに見つめているかの様でした。

暫く行くと水の落ちる音が微かに聞こえ始め、程なくして左手に不動の滝が現れました。
先客がお二人いらっしゃいましたが、私と入れ替わりになり他には誰も居なくなりました。

滝壺からの流れを跨ぐ様に橋が掛かり御堂が2つ。対岸の1つは不動堂で此岸のもう一つは判りませんでした。
参拝を済ませて橋の中央から落流を暫し眺めていました。前日の月山神社と同じく周囲はひっそりと鎮まり、滝の打つ音だけが辺りを満たしていました。

不動の滝を後にして上流方面へと進んで行きましたが、左手に続く流れには階段状に小さな滝が連なり耳目を愉しませてくれました。暫く歩いて国道321号線へ出て道の駅大月で小休憩。
その先の湊浦漁港では両手いっぱいに広がる空に雲と海、そして柔らかく漂う潮の香り。完璧でした。

道の駅宿毛に立ち寄って暫しの休憩。当日は何かのイベントが開催されていて出店が並び、多くの人で賑わっていました。
端の方のベンチに座って携行食をかじっていると地元の方に声を掛けて頂き暫しの雑談。御自宅に何度かお遍路さんや旅の人を泊めたことがあるそうで、励ましのお言葉を頂きました。

橋を渡って松田川沿いの土手道を歩いていると、行手に沢山の鯉のぼりが連なっているのが見えました。土手を降りて近づいて行くと川岸から対岸の山腹にかけて恐らく100匹近い鯉のぼりが風に泳ぐ姿。

宿毛大橋を渡りこの辺で少し休もうかと和田体育館の門の脇で休んでいると、「あらあら」と自転車に乗る男性が止まりお接待を頂きました。
お話を聞くとお遍路さんにチョコレートを渡しているそうで私が808人目との事。岩本寺の近くにお住まいのようで御自身もお遍路経験者であり、この先の松尾峠など道中について御教示下さいました。

再び歩き出し延光寺まであと4km程のところで2日目に同宿だった方と偶然にも再会。
「あれ?何でここにいるの?」と驚きの言葉に海側を回って来ましたと、お別れしてからの道中をあれこれ。こちらの方は金剛福寺から打ち戻って三原村の方から上がって来られた様でした。

延光寺での参拝を終えて再び宿毛大橋まで戻り当日の宿である「米屋旅館」へ向かいましたが、往きに通った和田体育館付近で響く三味線(三線?)の音に足を止めました。
仕事を終えた後か、クリーニング店の外階段に座って熱心に弾く姿がありました。

両側が近接した山に挟まれた場所の為その音色と歌声が反響し、更にそこへ17時の時報と夕陽が重なって何とも言えない幻想的な空間を造り出し、只々見聴き入ってしまいました。

宿毛大橋を渡って市街へ入り米屋旅館へ。
ここでまたまた件のお遍路さんと再会同宿となりました。
夕食時には翌日の松尾峠について女将さんを交えて。
雨の日はぬかるんで歩き辛いので国道を勧めており、近隣の宿でも同様のアドバイスをしていますとの事。
翌日は曇り時々雨の予報だったので、荒れる事が無ければそのまま峠道を行くこととしました。

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コメント

  1. 私も長い遍路道ではあちらこちらで廃校を見ました。おっしゃるとおり時が止まったなんとも言えない雰囲気が漂ってきてしばらく立ち止まって見入っていました。

  2. いつも良いご経験に満ちた歩き方をされていると思い、毎回楽しく読ませていただいています。まさに一期一会ですが、出会った遍路仲間や現地の方との話はずっと思い出に残っています。

  3. @あの時の亀
    コメント有難う御座います。

    私も同じく足を止めて見入り、写真を撮ったりしてしまいます。
    そして人間が作ったものだけで無く、山中で人知れず枯れ朽ちていく木々や動物の死骸などを見る度に、諸行は無常であり生じたものは必ず滅するのだという事を思い起こしています。

  4. @考え中
    コメント有難う御座います。

    いつもコメントを頂き感謝しております。
    たった1日であっても、お遍路で出会った方々の事は私もよく覚えています。
    他のお遍路さんもそれぞれに素敵な経験をされているのではないでしょうか。
    私的な考えですが、そうした経験や気付きは日常にも溢れていると思うのですが、あまりにも雑多な物や事に囲まれているが故に見えにくくなっているのかも知れませんね。

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