#53 狂雲遊行

#53 狂雲遊行

翌日。
この日は五十一番石手寺まで進んで打ち止め、その後、松山駅から空港へ向かい帰路の便へ。
焼かれる様な陽射しや台風の懸念など、この回も思い返せば色々と有りましたが、あっという間の6日間でした。

飛行機の搭乗時間は19時頃。「長珍屋」から石手寺まで、各寺での参拝時間を含めても正午頃には到着出来そうでした。
この日も札所以外に立ち寄りたい場所が2つあり、最後に道後温泉で汗を流せればと考えていました。

天候は曇り。台風の残り気の様な雲が遠くを流れていました。
少し湿った空気と虫の音が心地良く、こんな日も又いいなと杖を前へ。

6時半頃西林寺へ到着。参拝を終えますが、まだ7時前で納経所が開いておらず、山門脇のベンチに腰掛けて暫し。
檀家の方か、境内の掃除をされている方と「おはようございます」と挨拶を交わし、ぼんやりとその姿を目で追っていました。

余談ですが、西林寺は邪心を持つ者が境内へ踏み入ると無間地獄に堕ちるといわれているそうです。

この辺りは御寺様の感覚も短く、トントンと参拝を済ませてこの日最後の石手寺へ。
参拝を済ませて仁王門前で一礼し、また戻りますと念じて御寺を後にしました。

その後、石手寺前の御飯処「めしや」へ。
これまでお遍路中に飲食店へ入って昼食をとった事は無かったのですが、今回はこちらへ伺う事に。
いつもはカロリーバーなどで済ませているので、ゆっくりと椅子に掛け丁寧に調理された御食事を頂けるのは有難い事でした。

昼食を済ませて道後温泉の方へと歩いて行きましたが、湯に浸かる前に行くべき場所へ。
一つは、温泉街の賑やかな界隈から少し奥まった場所にある「宝厳寺」。もう一つはその少し先、護国神社の傍にある「一草庵」。

宝厳寺は一遍上人生誕の地。
一草庵は山頭火終焉の地として、是非訪れたいと思っていた場所でした。

古来より「旅」は人々を魅了し、旅から旅へと誘って来ました。
私はまだ患う程の経験はありませんが、「お四国病」という病を患う方々の心情も、最近になって何と無く分かるような気がしてきました。

空也上人や一遍上人の遊行
山頭火の放浪人生
そして、日々旅にして旅をすみかとし、古人も多く旅の中で死んでいったと綴った芭蕉。

それは、人の一生もまた旅の様で、旅の中に生き旅の中に息を引き取るのだ、という事なのでしょうか。

考えてみれば人類の歴史もまた旅から旅であり、行くあての無い旅を歩き続けている様なものなのかもしれません。

そして私達それぞれの、日々何気無い一瞬一瞬もまた旅であり、それ即ち遍路であるのかなと思ったのでした。

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コメント

  1. そのような方々のゆかりの地がこの辺りにあったんですね。1周目ではそこまで余裕なかったですが、次は皆様のご経験を参考に色々とまわってみたいと思います。

  2. @あの時の亀
    コメント有難う御座います。

    私もひょんな事から知ったので、四国各地にはまだまだお遍路にまつわる場所や史跡などが多数あるのでしょうね。
    私も皆さんの体験談などを参考に、色々な場所へ足を運んでみたいと思います。
    四国遍路は本当に奥深いですね。

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