#57 喫茶去

午前中一杯は雨予報の当日。
お見送り下さった女将さんから、有り難く今治特産のタオル地のハンカチを頂きました。

僅かに湿る程度の雨だったので雨具は着けずに菅笠を被って歩き出しましたが、その雨も出発から30分程で止み、雲が少しずつ割れて晴れ間が覗き始めました。

先ずは延命寺。天候と時間帯の為か参拝の方は入れ違いでお2人程。
納経を終え納経所前のベンチで出発の支度をしていると、すぐ隣で歩きと思われる方が足にビニール袋を被せたりカッパを着たりと雨養生。
お互い遍路と知りつつも言葉を交わさないこの距離感も良いものです。

延命寺を後に、広大な墓地を抜けて市街地を進み南光坊へ。国道に面した仁王門が印象的な御寺。参拝を済ませて、さて次へと腰を上げると俄かに雨が降り始め暫しの雨宿り。
この日は計六ヶ寺への参拝があった為、気持ちが急いていたのかもしれません。
そんな心を見透かされた"焦るな、急くな"と戒める様な雨でした。

小降りを待って南光坊を出ましたが、暫くすると再び雨足が強まり、姫坂神社前の木の下に身を寄せて。
雨足を窺いながらタイミングを見て木を離れ、今回の区切り打ちで訪れたいと思っていた海禅寺へ。国道から山側へ少し入った所に御寺はありました。
個人的な印象ですが、いかにも「禅寺」といった佇まい。意外にも本堂前には修行大師像が立ち、番外霊場である事も記されていました。

御存知の方も多いかと思いますが、「歌う僧侶」として知られる"キッサコ"薬師寺寛邦和尚様が住されているのが、この海禅寺です。
般若心経を覚える際に幾度と無く動画を見ては口ずさみ、参考の一つにさせて頂きました。
その御礼も兼ねて、ここに辿り着いた時は是非にと、四国遍路開始当初からの念願がまた一つ叶いました。
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薬師寺和尚様は僧侶としてのお勤めやライブ活動の他、現在、四国八十八霊場全寺で般若心経を歌う様子を撮影するというプロジェクトを進められておられ、その様子はYoutubeに随時アップされています。こちらも今後が楽しみなところです。

本堂前で般若心経を一唱し、僧坊へ伺い写経を奉納して辞去すると、先程までの雨がピタリと止み、西からの風に雲が散らされて陽が差し始めました。

海禅寺の「日照山」という山号を思い出して何か嬉しくなり、上着を脱いで泰山寺へと向かいました。