#63 二年

#63 二年

2022年4月末から始めた四国遍路徒歩巡礼区切り打ちは、先日の大型連休で丁度二年となりました。

何一つ行程を組まずバックパックに寝袋を詰め込み四国へ向かった2年前の事を懐かしく感じ、もう6回も四国へ行っているのかと思いながらも、この2年で自分の中の何かが変わったかと振り返れば、ただいたずらに歳を二つ重ねたくらいの事しか思い浮かびません。

今回は午後の便で四国入りし、初日は前回の最終札所付近までの移動のみ。翌日から巡礼再開となりました。

松山駅を出た予讃線が瀬戸内の海沿いへと出ると既に暮れ時の空が広がり、西の山際、曇の僅かな隙間が橙に染まり、霞む島影を仄かに浮かび上がらせていました。

列車に揺られながら伊予北条、今治辺りと、車窓に映る景色の中に昨年末から年始にかけて歩いた道が時折見え隠れしていました。

伊予西条で下車後、北口からほど近い「セントラルホテル」さんへ向かい、荷物を下ろして食事の買い出しにと外へ。
駅前へ出て交番の脇にある歩道橋の上に上がり、南に聳える山々を暫く眺めてから近くのコンビニへ。部屋へ戻り手早く夕食を済ませて早々に床に着きました。

2日目。5時過ぎに宿を出発。
西の空には未だ月が残っていましたが、東の低い所は既に明るみを帯び始めていました。

先ずは遍路再開の御挨拶の為、前回の最終札所前神寺へ。
ゆったりと歩く感覚を確かめながら、再び遍路に戻れた事を有り難く思いつつも、この回での山場が頭に浮かび身の引き締まる思いでした。

あちらこちらで燕が元気に飛び交い、辺りに目をやれば地面を埋め尽くす黄金色。最初は何の作物かと思っていましたが、近づいてよく見ればそれが麦だと分かり、「うどん県」香川が近いからかと一人ごちて。

前神寺に到着し参拝を済ませますが時刻は7時前と、納経所が開くまであと1時間ほど。
4月から納経料の値上げと共に開始時間も8時へと変更になりましたが、この1時間は遍路を巡る方々の行程に少なからず影響があるのでしょうか。

これまでの順序からすれば重印を頂いてから巡礼開始としたいところでしたが、この日に頂かなくても大丈夫だと、御寺様を後にしました。

再開後最初の札所は別格十二番延命寺。当初はこの付近で二泊目をと考えていましたが、流石に近すぎるかと思えたのと、翌日の三角寺から仙龍寺、更に椿堂常福寺への行程を考えると、もう少し先まで進んでおきたいと伊予三島を二日目の宿地としました。

当日は正にこの時季といった気候で暑くも寒くも無く、歩くには快適な一日でした。
室川橋の袂で河川敷の石段に靴を脱いで休んでいると、通りすがりの地元の方と二言三言のやり取り。一人黙々と歩いていると、時折話し掛けて頂けるのは有り難く嬉しいものです。

関ノ戸辺りに差し掛かり、そろそろ休憩をと思っていると、行手の道沿いに立つ善根宿が目に入り立ち寄ってみることに。

お邪魔しますと中を覗くと「まあ入って入って」と迎えてくださり、有り難くお茶を頂きながら宿主様と暫しの雑談。
本当に色々な生き方があるのだと学ばせて頂きました。

「いざり松」延命寺へ14時少し前に到着。大師堂は納経所と並ぶ形で同じ建物内に併設されていました。
納経帳をお渡しすると「どちらから?」とお声がけ頂き、「いざり松」の由来や往時は遠方から多くの方が松を見に訪れていたというお話を聞かせて頂きました。

更に念珠玉の親玉の話題になり、令和6年6月より十五番箸蔵寺から三番童学寺へ引き継がれるとのお話し。札所の番号順に巡っていくのかと思っていましたが、各寺の事情などを考慮して決められているそうです。

延命寺を後に伊予三島まで十数km。三島市街に入り、いつもの如くスーパーで買い物を済ませて17時過ぎに宿へ到着。
巡礼再開初日の歩行距離は40km程。今思えば初日にしては少し歩き過ぎたのかもしれません。
右足首に少し違和感を感じていましたが、まあこんなもんだろうと、この時はあまり気にも留めませんでした。

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コメント

  1. 前神寺以降は途中別格もありますが延々と車道を歩く行程で、やや物足らなく感じるのかなと想像していましたが、考え事をするにはちょうど良かったです。コンビニや食事処も沢山あってそれらを眺めてるだけでも楽しく歩けました。

  2. @あの時の亀
    コメント有難う御座います。

    前神寺から次の三角寺までは距離があるので、黙々と歩きながら考え事をするには良いかもしれませんね。

    善根宿の宿主さんが「この辺は本当に何も無いからね」と仰っていましたが、その「何も無い」という事が現代では凄く貴重なのではないかと思いました。

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