#18 摩訶不思議

#18 摩訶不思議

「ふれあいの里さかもと」泊の翌日。
7時半過ぎに宿を出て鶴林寺への山道口へ。いよいよ阿波国の難所二番手三番手"お鶴と太龍"との手合わせとなり、準備運動も兼ねて約4km程をゆっくりと歩いて行きました。
この勝浦町坂本付近の地域も大自然の真っ只中という感で、蒼々とした山谷に包まれ四国の雄大な景色の一端を担っている様でした。

途中、配達中のお豆腐屋さんから出来立ての竹輪をお接待頂きました。
一口かじると市販の物とは違う心地良い僅かな弾力とふわりとした食感に摺り身の香りが立ち、思わず「美味い!」と口に出てしまいました。人生で一番の竹輪に出逢った瞬間でした。

鶴林寺山道口前へ到着しトレッキングシューズに履き替えて入山。へんろ転がしのある道ではなく坂本側の道から登ったので、急坂はありましたがまずまずといった印象でした。
鶴林寺での参拝納経を済ませてすぐに大龍寺へ。当日の目標地点は平等寺、宿は「山茶花」。
振り返ればこの日も少し詰め込みすぎたかと思える行程でした。

焼山寺然り、鶴林寺や太龍寺もまた、もう少し時間を割くべき御寺様でした。
山上の御寺様には何か独特な"気"の様なものが満ちている様に感じます。

太龍寺からの長い下り道を抜け、後は平等寺まで平地かと、油断した所へ大根峠。やれやれと歩いていると、出逢った五色幕に励まされて。

峠を越えて田園地帯を進んで行くと、先の方に平等寺の仁王門と思しき甍が見え程なくして到着。時刻は16時少し前でした。

平等寺での参拝を終え仁王門前で一礼辞去。ほぼ隣りに在る当日の宿「山茶花」へ。
夕食後、納め札を書き終えるとすぐに眠気が襲い、うつらうつらとしてそのまま布団へ。
翌日で一国打ち完遂という安堵もあったのかも知れません。

何時頃か。

寝ていると突然、両腕を掴まれるような感覚を覚え、鬼とも悪霊とも何とも言えない姿を感じました。
咄嗟に大日如来の印を組み光明真言を唱え始めましたが不思議と恐怖感はあまり無く、このまま続けようと二反目に入ったあたりから呻き声と共に徐々にその姿は消えて行きました。
暫くして意識がはっきりとし始め「夢だったのか…」と思いましたが、手の印は組まれたままでした。

日頃、何とは無しに般若心経や光明真言を口ずさんでみたり印を組んだりしていましたが、この時咄嗟に出た事に後になって驚きました。

夢か現か。

今こうして書いていても作り話のようで笑ってしまいます。
霊感など全くありませんが、何とも不思議な体験でした。

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コメント

  1. はじめの頃は般若心経をまともに読めなかったのですが、何気ない平凡な道を歩いている時に自然に般若心経を口ずさむようになっていて、それが不思議と自分への応援歌のように心強く安心できたのを思い出しました。

  2. @naru
    コメント有難う御座います。

    般若心経について、玄奘三蔵の伝記「大唐大慈恩寺三蔵法師伝」にこんな一節が有ります。

    『いま沙河を通ることとなり、いろいろ奇怪な悪鬼が自分を巡って前後するのに会った。
    その時、観音(観世音菩薩)を念じても、それらの悪鬼を去らせることはできなかったが、この経を読誦すると、声を発して皆消えてしまった。
    危険な時に救われたのは、じつにこの経のおかげであった。』

    真言やお経には何らかの力があるのかも知れませんね。

  3. お遍路中って何故か不思議なこと多いですよね。
    それも含めての四国遍路なんだなと思います。
    何事もなくて良かったですね。

  4. @ひろ(歩き)
    コメント有難う御座います。

    仰るように不思議な体験をされる方が多いと聞きました。

    それは”霊場”を回るが故なのかも知れませんね。

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