#35 足摺岬

#35 足摺岬

翌朝起床後。お遍路中の習慣となっている水分補給とカロリーバーの摂取を済ませ、ストレッチをしながら日の出を待ちました。

5時を過ぎた頃から徐々に夜闇が解け始め、暫くして空と海を分かつように太陽が昇り始めました。
ベランダへ出て静かな空気と朝日を味わい階下へ降りて行くと、廊下や食堂の座敷いっぱいに光が満ちていました。

眩しいでしょと、後ろからの宿主様の声に返事をお返して開け放たれた玄関から靴をつっかけて表へ出ると、道を横切り堤防の上へ上がりました。

お遍路中、日の出や夕焼けに何度と無く出会いその美しさにいつも感動していますが、この朝の情景も心に残るものの一つとなりました。

この日はいよいよ足摺岬へ歩を進め、三十八番金剛福寺へ。そこから岬の反対へ回って松尾の「青岬」までの行程でした。

早目に用意して頂いた朝食を頂いて身支度を整えて出発。早天の朝焼けの通り間違いの無い快晴でした。
朝方は少し冷えましたがこの時季らしい清々しい気候で、穏やかな風がそよぐ中歩き出すと新緑や花の香りが何処からとも無く漂い、ここ数年のマスク生活で忘れていた季節の気を感じました。

途中逆方向から来る5、6名のお遍路さんに御挨拶しつつ、逆打ちかなと思いながら次の延光寺への打ち戻りもあるのかと、この先幾つかのルートがある事を思い返しました。

大岐の浜を経て「あしずり遍路道」へ。途中倒木などがありましたがそれ程苦無く進む事が出来、山道を抜け海蔵院という御寺の境内地へ出ると、そこから平地へと降りてすぐの神社で暫しの休憩。

何か少し口に入れようかと「久百々」の宿主様から出発時に持たせて頂いた袋を開くと、一度には食べ切れないほど沢山の食糧が入っていました。本当に助けられてばかりだと、有難く感謝して頂きました。

前日同宿の方と出発時間は前後しても途中で追いつき追い越され、一緒に休憩したりお喋りしながら歩いたり。そんな事を繰り返しながら気付けば足摺岬に到着していました。

中浜万次郎像と灯台が目に入り、周囲はツーリングや観光の方々の賑わい。
岬から見下ろす黒潮と見渡す限り遮る物無くどこまでも続く太平洋。室戸岬とはまた違う景色に暫く見入りながら、ここまで歩いて来られたのだという感に入っていました。

金剛福寺での参拝を終えて「足摺七不思議」を回り、当日の宿である「青岬」へ。
左手に続く海を眺めながら歩を進め、小さな入江を覗き込んでは海底まで透き通る透明度に都度驚いていました。
車やバイクの行き来も少なく途中でサイクリストの方と挨拶を交わし、こちら方面へ来る方は少ないのかと思いながら。
タイミングもあるのでしょうが、2日後に宿毛へ出るまで他のお遍路さんと出会う事は有りませんでした。

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コメント

  1. 大岐や以布利、窪津、そして足摺岬の道は遍路旅の慣れもありますが室戸岬とはまた違った印象がありました。打ち戻りでこれまでほとんど会うことのなかった遍路さんとすれ違うこともできましたし、思えば遠くまで来たなという感情も自分への励ましになりました。

  2. 車の走行音も少なくなった足摺周辺の道では草花の匂い、木の葉が揺れて擦れる音、山肌から湧き出る冷たい水など、わたしも自然をたくさん感じました。

  3. @あの時の亀
    コメント有難う御座います。

    室戸岬と足摺岬。皆さん其々に思いがあるのでしょうね。
    初めて四国遍路の地図を見た時、はたして本当にこんな所まで歩いて行けるのかと半信半疑でしたが、一歩一歩を積み重ねる事で辿り着けたのだと、今改めて想い返しています。

  4. @考え中
    コメント有難う御座います。

    波の音や海の色、室戸岬とはまた違う景観など足摺岬ならではの良さがありますね。

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