#16 無上

#16 無上

翌日は県庁付近から恩山寺を経て立江寺迄の道でした。
割と余裕のある行程ですが、二日後の「お鶴と大龍」を見据えて"休足日"としました。

立江寺に到着し本堂大師堂と参拝を済ませて納経所へ。納経を終え宿泊の旨告げると、「お泊まりさん到着で〜す。」と奥に向かって声を張り「こちらへどうぞ」と御案内頂きました。

女中の方から、「今日の宿泊はお一人のみで夜のお勤めが有りませんので、宜しければ本堂でお経を上げられますか?」との御厚意に、一も二も無く「お願いします。」と即答しました。
本堂内へと通して頂き「終わりましたら扉を閉めて来てください。」と、一人御堂内に残されて。

暮れ時の陽が格子窓に柔らかく残り、仄暗く鎮まった堂内。
灯明と線香を献じて御本尊、延命地蔵菩薩の御前で正座合掌。念珠を擦り勤行次第を開いて、普段よりもゆったりと読経出来ました。

その後、部屋へ御案内頂き杖の先を洗って一日の無事を感謝して床間へ。続いて荷を解いて風呂場へ。
浴室の小さな窓には夕空。膝を折り湯船に浸かると、丁度時刻を報せる梵鐘の音が響きました。
この上無い時間でした。

前夜に以降の行程を決めた際、用意して来た分の写経では不足すると判り、立江寺迄の道中でダイソーに立ち寄って半紙を購入しました。
筆ペンを持参していたので夕食後に写経を始めましたが、疲れからか途中で睡魔に襲われ眠ってしまいました。
翌朝起床後に再開して、ひとまず一巻を書写。

出発の身支度をしながらカーテンを開けると、暁天を掃いた様な空が広がっていました。

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コメント

  1. 恩山寺の後の竹林道は今でも思い出に残ってます。(超えた後、蚊に刺されまくりました)

  2. 本堂内で一人で読経なんて、なかなか出来る経験ではないですね。

  3. 時間に余裕がある遍路旅は羨ましいです。実際、誰もができる事なのではありますが、なかなか行動に移せなかったりします。きっと不安が強くて先を急いじゃうんだと思います。夕方入るお風呂なんて一度はやってみたいです。

  4. @naru
    コメント有難う御座います。
    あの道は風情があって素敵ですね。私もよく覚えています。

  5. @ひろ(歩き)
    コメント有難う御座います。
    そうですね。貴重な体験をさせて頂きました。有難い事です。

  6. @くまごろう
    コメント有難う御座います。
    先を急いでしまう気持ちは誰にでも有るかとは思いますが、時にはゆっくりと過ごす日があっても良いかもしれませんね。一日の最後に入るお風呂は癒されますし、本当に有り難いと思う時間ですね。

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